2024/08/19

アンガーマネジメントとは?

 

 

療育と聞くと、つい子どもにばかりフォーカスをあててしまいがちですが、

子育て中の親も子どもと一緒に成長するチャンスです。

子どもが全然理解してくれない。言うことをきいてくれない。お片付けしない。などの理由で保護者は発達障害の子どもに限らず、

どんなお子さまに対しても「小さなことでイライラする・・・」「感情に任せて怒ってしまった・・・」などの経験があるのではないでしょうか。

今回は親(大人)のアンガーマネジメントを中心にみていきましょう。

 

 

怒りと上手く付き合う「アンガーマネジメント」の考え方や具体的な実践方法をご紹介しますので、

大人になった今も自分を理解し、アンガーマネジメントによってどのような効果があるのでしょうか。

 

 

 

【アンガーマネジメントとは?】

 

アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手く付き合うための心理トレーニングのことです。今ではビジネスシーンや子育ての場など、広く活用されています。

特に企業では、部下を持つ管理職の方たちが「怒りの感情をコントロールできる力」を身に着けるため、アンガーマネジメント研修を実施する会社もあります。

 

 

◊アンガーマネジメントの効果やメリット◊

アンガーマネジメントによって、怒りの感情をコントロールすることができると、多くのメリットがあります。

 

 

 

♦自己分析できるようになる

アンガーマネジメントでは、自分がどんな場面で怒りを感じるかを把握することが大切です。

正義感が強い・完璧主義の一面がある・思ったことを素直に伝えたいタイプ、など自分の分析をしてみましょう。

 

自分の怒りを分析することで、怒りの感情だけでなく、そのような場面で自分がどう振る舞うのかが見えてきます。

良い面・悪い面が見つかったらメモに書いて読み返すようにしましょう。

 

適切に自己分析できるようになれば、伸ばしていきたいスキルや不足している経験などもわかるので、今後のキャリアやポジションの形成にも役立ちます。

 

 

 

♦人間関係のストレスが減り、組織内のコミュニケーションが活性化される

怒りをコントロールできれば、対人関係のストレスが減り、風通しの環境づくりにつながります。組織内にコントロールできないメンバーがいると、

報告すべきことがあってもスムーズに伝えられない環境になっている可能性があります。

なぜなら、報告すれば感情的に叱責される可能性が高いからです。

非常にコミュニケーションが取りづらく、ストレスがかかります。

 

離職理由の主な要因の人間関係や信頼関係の悪化のように、組織内のコミュニケーション不足は、さまざまなところに悪影響を及ぼします。

 

アンガーマネジメントで怒りをコントロールし、メンバーがお互いを思いやり協力できる環境づくりができれば、困ったときでも相談しやすくなるでしょう。

そして仕事へのモチベーションアップにもなり、会社の業績にも大きく影響するでしょう。

 

 

♦パワハラの防止・抑止になる

 

上司から大勢の前で叱責されたり、理不尽な怒りをぶつけられたりすると、

部下が必要以上に上司の顔色を伺うようになり、組織の生産性が下がってしまいます。

パワハラとして大きな問題に発展することもあるでしょう。

しかし、当人は意地悪でやっているのではなく、ただの怒りのコントロールができていないだけというケースは珍しくありません。

アンガーマネジメントを組織的に導入すれば、上司も部下も安心して仕事を進められるようになります。

そうした環境が会社全体にいきわたると、パワハラなどを生まれにくくする自浄作用も働くことでしょう。

 

♦思考の幅が広がる

 

怒りが生じるのは自分自身の価値観と現実に起きた事象のギャップがある時です。

アンガーマネジメントを身につける中で、自分の価値観や思い込みを自覚していけば、大きなギャップは生まれにくくなります。

 

 

近年、国内における男女の働き方においても、出産や育児や介護のための休暇取得、時短勤務やリモートワークなど、

価値観や働き方が多様化してきたと感じる方が多いのではないでしょうか。

多様な人材や価値観を求めることが、組織の成長につながります。

 

アンガーマネジメントによる感情のコントロールを行い、理解しようとする姿勢を持つ必要があります。

 

様々な人と話す、本を読むなど沢山の多様なものと触れあっていきましょう。

そうすることで、怒りのコントロールをし、対話が可能になる為、コミュニケーションが取りやすくなります。

 

♦仕事の生産性が上がる

 

「些細なことでイライラしない」

「思ったことをつい口に出してしまい、人間関係を悪化させてしまう」

こうしたメンバーが多い組織では、本人も周囲のメンバーも目の前の仕事に集中しにくく、モチベーションも下がってしまいます。

相談できない雰囲気が強くなり、困ったことがあっても自分だけで抱え込んでしまう可能性があるでしょう。

アンガーマネジメントを導入することで、怒りによる集中力低下や主体性の低下を防ぐことができます。

怒りに消費されていた時間や労力を仕事に向けられ、組織の生産性向上につながるでしょう。

さらに、仕事へのやりがいを感じ、成長意欲や協力して業務を進めるという姿勢も期待できます。新しい商品の企画や業務改善のアイデアも生まれやすくなります。

業務効率化を図るためにも、アンガーマネジメントが必要です。

 

 

 

アンガーマネジメントのデメリット

一方でアンガーマネジメントによって無理に怒りを抑えようとしてしまったり、

周りからは「あの人は怒らない」と誤解されてしまったりする場合、デメリットが生じることもあります。

 

 

■怒りを無理に抑えようとしてしまう

「怒ってはいけない」と怒りの感情に無理に蓋をしようとすると、心のバランスを崩してしまうかもしれません。

怒りは、人間に本来備わっている感情です。

怒りが生じる原因には、自分でも見えていない欲求が隠れているかもしれません。

怒りを抑えて終わるのではなく、一度落ち着いて怒りが生じた原因を考えてみましょう。

 

 

■都合よく扱われてしまう

 

アンガーマネジメントによって、「怒らない」ことを心掛けていると、

嫌なことがあったり、理不尽なことをされても怒らないという印象を与えてしまう場合があります。

「あの人はNOとは言わない」など誤解を受ける場合があります。

結果として、キャパシティを超えた仕事量を強いられたり、嫌な仕事しか回ってこない等

デメリットが生じやすくなります。

こうしたことが長く続き積み重なると、心身にも支障をきたすでしょう。

こういったケースは、自分の要求を倫理的に伝えたり、上司を通してNOを伝えたりするなど「怒らずかつ要求を伝える」という方法をとる必要があります。

 

 

■感情のエネルギーが湧かない

怒りの原動力にして頑張れるタイプの人もいます。

そうした人は、怒らないようにすることで、活動するためのエネルギーが足りなくなってしまうかもしれません。

怒りをいい方向のエネルギーに変えられるなら、より小さい怒りでも高い推進力に変えられる方法を模索してみましょう。

これもアンガーマネジメントのひとつです。

 

 

■自分の「怒り」を正しく認識する2つのポイント

 

「アンガーマネジメントができている人」はどんな人?

注意するべきことは、「いつも穏やかで何をされても怒らない人」ではないということ。

怒りの感情は、危険から身を守るために必要な、自然な感情です。

そうした自分の怒りの感情に向き合い、適切にコントロールすることが、アンガーマネジメントができる人といえます。

生じた怒りを上手にコントロールするには、怒りの生じるメカニズムを知るとともに、自身の傾向を正しく認識しましょう。

 

自身の怒りの傾向を正しく認識するには、2つのポイントがあります。

①怒りのメカニズムを知ること

②怒りが生まれやすい状況を知ること

 

■①怒りのメカニズムを知る

「後輩と約束して、その後輩が30分遅れてやってきた」ときは、

どのような感情を抱きますか?

例えば、その後輩が日頃から態度が悪い社員だったとしたら、

「30分も遅れてきて何してるの」と怒りの感情が先に出てくるのではないでしょうか。

 

ところが、後輩が日頃から頑張っていて、前日は体調が悪いのに遅くまで仕事をしていたとしたら、

怒りよりも先に出るのは心配の感情ではないでしょうか。

 

感情は、ある事象が起これば必ず特定の感情が沸き上がるというものではありません。

事象に対して行う「意味づけ」によって生まれる感情が異なります。

 

事象→意味づけ→感情の発生

目の前で起こることはコントロールできません。

しかし、その事象に対する「意味づけ」は自分でコントロールすればいいのです。

 

■②どんな時に怒りが生まれるのかを知る

 

怒りの感情はどのような時に生まれるのでしょうか。

それは、「~するべき」 「~であるはず」という自分の感情・期待とギャップが生じ、思い通りにならなかった時です。

先ほどの態度の悪い後輩が30分遅刻してきた例で考えてみましょう。

 

 

「特別な事情はなく、約束の時間に遅れるべきではない」

「あの後輩には、特別な事情などないはず」

「後輩は約束通り来るべき」

 

こうした自分の中での「べき」 「はず」

が先行した結果、それとは異なる事態になった時に怒りが発生しています。

重要なのは、この「べき」 「はず」は人によって異なるということです。

まずは、自分の中で当たり前に持っている価値観を自分で確認すること。

その上で、価値観の許容範囲を自分の中で広げていくことで、

不要な怒りの発生を防ぐことができます。

 

 

 

あなたの怒りは何タイプ?

まずは自分の中の「べき」 「はず」 を認識するために、自分の怒りのタイプを知るとよいでしょう。

これは、「どのような場面で、どのような怒りが生じやすいのか」ということです。

 

日本のアンガーマネジメント協会が公表している怒りは、6つのタイプがあります。

 

 

①曲がったことが許せない「公明正大タイプ」

公明正大タイプは、自分の中に正義や信念を持ち、定めた目標に突き進むタイプ。

正義感が強いので、ルールや規模を軽く見る人に対して怒りを覚えます。

 

公明正大タイプは、「価値観は人それぞれ違う」と意識することです。

違いを認識することで、相手の価値観を冷静に見つめられるようになり、受け入れられる範囲が広がっていきます。

 

 

②何事にも白黒つけたい完璧主義な「博学多才タイプ」

博学多才タイプは向上心が高く、初めてのことでも果敢に挑戦するタイプです。

完璧主義なところがあり、自分にも他人にも厳しくしてしまいます。

同僚や部下がミスをすると、「なんでこんなこともできないの?」と責めてしまうのが典型的です。

博学多才タイプが怒りをコントロールするには、「何事も白黒ハッキリ決められる」という前提を捨て、

「中間があってもいい」という気持ちを持つことです。そして、皆はどう思うのかを考えて多角的な視点を持つようにしましょう。

 

 

③自分を曲げない頼れるリーダー「威風堂々タイプ」

威風堂々タイプは自信に溢れており、プライドが高いことが特徴です。

自他ともに認めるリーダー気質なので、行動力や周囲の期待に応える力があります。

一方、威圧的な態度で他人をコントロールしようとする傾向もあり、何事も自分の思い通りに進めようとしてしまいます。

威風堂々タイプの場合、自分の思い通りにならず苛立ちを覚えても、「より良い方向に進む為には、

自分が我慢することが必要だ」と現状を受け入れる姿勢を持つことがポイントです。

 

 

 

④穏やかな外見の中にも譲れない信念がある「外柔内剛タイプ」

外柔内剛タイプは、穏やかそうな印象とは裏腹に、内面に頑固たる意志を持つタイプです。

強い信念を持つがゆえに一度行動すると後に引けなくなることも多いでしょう。

また、根拠もなく「自分が正しい」と思い込み「やり方が誤っている」と指摘したり、周りが自分とは違うやり方をしていると怒りを覚える傾向があります。

 

外柔内剛タイプは、周りの苛立ちを感じたら、一度深呼吸して「自分の思い込みや価値観を押し付けていないか?」と振り返ってみてください。

「自分のやり方以外にも方法がある」と気づくことで、多様な考え方、他のやり方があることを受け入れやすくなります。

 

 

 

⑤信用深く衝突を避ける「用心頑固タイプ」

用心頑固タイプは、物事を客観的に捉え、何事にも真面目に取り組みます。

客観的に判断できるがゆえに、自分と周りを比較して、妬みや怒りの感情を抱えるタイプです。

周囲に頼ることが苦手なため、困ったことがあっても自分で解決しようと抱え込んでしまうタイプです。それがストレスになり怒りを生みます。

 

用心頑固タイプは、まずは周りに頼ることが大切です。

相談できる状況や機会を作っておくことで、イライラが発生しにくい状態になります。

 

 

 

⑥思ったことをストレートに表現する「天真爛漫タイプ」

 

天真爛漫タイプは、自分の気持ちを表現することが得意で、主張をストレートに伝える傾向があります。

周りの空気を読まないことも多く、自由に発信できない場面では、大きな不満を抱えてしまうでしょう。

天真爛漫タイプは、勢いで行動せずに、一度立ち止まる習慣を身につけましょう。

周りのメンバーにアドバイスを求めることも、ひとつです。

走り出してから衝突する前に相談することで、不満なイライラを減らしましょう。

 

 

 

次回はいよいよ【アンガーマネジメントによる実践方法】や【怒りの6秒間を乗り切る方法】をお伝えいたします。