癇癪とは
癇癪とは、「大きな声を上げる」「手足をバタバタさせて暴れる」「物を投げる」など、感情の爆発伴う行動のことです。
なかなか収まらない、何度も繰り返していて悩んでいる保護者の方もいるかもしれません。
子どもが癇癪を起すのには、子どもの性格や環境・言葉の発達スピードなどさまざまな要因が関係してしています。
まずは、癇癪を起す原因を知り、子どもの特性にあった対応をすることが大切です。
癇癪は子どもにはよくあることです。
癇癪は、成長過程のひとつであるため、それ自体が悪いわけではありません。
子どもの成長過程は一人ひとり異なりますが、1歳になる少し前くらいから癇癪が見られるようになります。
2~4歳が最も多く起こり、5歳を過ぎると癇癪は落ち着く傾向があると言われています。
癇癪と発達障害の違い
癇癪をよく起こしたり、小学生まで長く続いたりすると、
発達障害があるのではないかと考える方もいますが、癇癪があるからといって発達障害というわけではありません。
ただし、発達障害の特性が癇癪の要因の一つになっている場合もあります。
癇癪と発達障害の関連性
癇癪を起こすからからといって発達障害があるとはいえませんが、発達障害の特性が癇癪の要因に関係していることもあります。
【癇癪の特徴】
こだわりが強い
発達障害のある子どもの中には、ある特定のものごとに対するこだわりが強い場合があります。
着る服をこだわる
服を購入しても同じ服しか着てくれなかったり、順番にこだわりがある
教わった手順を徹底的に守ろうとしたりする
急に手順が変わると不安になり、柔軟な対応が苦手で癇癪を起こす。
【対人関係や社会性に困り感がある】
コミュニケーション全般に苦手意識や困り感を抱えている発達障害のある子どもも少なくありません。
相手の意図や気持ちを察したり、暗黙の了解や曖昧な表現を理解したりすることが難しい場合があり、相手から「違うよ」と言われたときに、困惑したりストレスを感じ癇癪につながることもあります。
【感情のコントロールが難しい】
発達障害のある子どもの中には、自分が思い通りにならないことが起きると怒ったり、泣きわめいたり等の感情コントロールが難しい子どもがいます。
また、気持ちの切り替えが苦手な子どもも多く、イライラした気持ちが収まらず癇癪を起こすこともあります。
【自分の考えや思いを言葉にすることが苦手】
なにか嫌なことがあっても、何が嫌なのか自分自身の感情や感覚に気づきにくかったり、自分の気持ちや意見を言葉で表現しずらかったりして困っている子どももいます。小さなフラストレーションがたまり、癇癪という形で爆発することがあります。
子どもが癇癪を起す原因
癇癪を起した際の対応はそうすればいいのかお悩みの保護者の方も多いのではないでしょうか
そんな時は、「どうして癇癪が起きているのか」を探ってみましょう。
■「生理的欲求を満たすための癇癪」
癇癪の原因としてもっとも多いのが、「欲求不満」「疲労」「空腹」と言われています。
乳幼児期は「お腹がすいた」「おむつが濡れている」「眠い」など、不快感を泣いて表現することで、ミルクをもらえたり、おむつを替えてもらえたり、寝かしつけてもらえたりして、不快感を取り除くことができます。
「おなかが空いて泣く」などもコミュニケーションの一つですが、激しい感情を伴うと癇癪になります。
乳幼児期は生理的欲求を泣くことで伝えることが多いですが、成長とともに社会性やコミュニケーションの発達など様々な要因が関係するようになります。
■「コミュニケーションのための癇癪」
1歳頃になると、身近な人の顔がわかるようになり、初めての人や知らない人に対しては、泣いたりして人見知りをするようになります。
2歳頃になると、大人の言うことがわかるようになり、自分の意志を大人に伝えたいという欲求も芽生えだします。
「自分でしたい」という気持ちも強くなります。
自分の意志や欲求を「いや」という言葉で表せるようになりますが、思い通りにいかないと、泣いたり癇癪を起すことがあります。
5歳頃になると、自分の意志や欲求を言葉で伝えられるようになり、癇癪は落ち着いてきます。
大人のように自分自身の欲求を言葉でうまく表現できない子どもにとっては、癇癪は自分の欲求を伝えるコミュニケーション手段なのです。
■「子どもが癇癪を起す背景」
子どもが癇癪を起す背景には、
・注意してほしい/かまってほしい
・あれが欲しい/こうしてほしい
・これはしたくない/避けたい
等の要求したい気持ちや、拒否したい気持ちがあります。
■「癇癪は子育てのせいではない」
子どもが癇癪を起すと、自分の子育てのせいと責めてしまうかもしれませんが、
癇癪は子どもの性格や環境、言葉の発達スピードなど様々要因が関係しています。
癇癪に度々対応していると疲れてしまうこともあるでしょう。
癇癪の頻度を少なくしていくためには、普段の生活から癇癪を起さないよう工夫していくことが大切です。
■「見通しを持たせてあげる」
気持ちの切り替えをすることは、子どもにとっては難しいものです。
例えば、いきなり遊びを中断されることは、子どもにとってはストレスなので、癇癪を起す要因になります。
「~~したら、お風呂にしようか」「~~したら宿題しようか」など、次の行動の予測がつく声掛けを行うと、心の準備が持てて癇癪を起こしずらくなります。
また、視覚的にわかりやすくする工夫もできます。
例えば、スケジュールを絵や写真と文字で提示するなどです。
■「コミュニケーションツールを活用する」
自分の意見や気持ちを分かってもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。
言葉で伝えることが苦手な場合、図やイラストにしたり、文章にまとめたりする方法があります。
また、「イライラしている」「落ち着いている」などの気持ちを描いた絵カードを使うのもよいかもしれません。
子どもが気持ちを伝えやすい方法でコミュニケーションをとってみましょう。
■「気持ちを切り替える方法やルールを用意しておく」
普段子どもが穏やかなときに「イライラしたときは、どうするとよいかな」と予め対処方法について話しておくといいでしょう。
例えば、落ち着く場所を決めておいて、不安になったときは移動するようにする。
また、不安になったときは、落ち着く好きな音楽を聴く。好きな香りをかぐ等です。
また、癇癪を起していないときに「おもちゃの取り合いになったときは、こうしよう」など約束ごとを決めておくといいでしょう。
■「子どもの癇癪が起こってしまった時の対応ポイント」
癇癪に対して叱っても根本的な解決には繋がりません。
子どもが癇癪を起した時のポイントは「安全を確保」して「落ち着くまで待つ」ことです。
安全を確保する
子どもが癇癪を起した時は、子どもの安全を確保するようにしましょう。
物を投げる場合、硬いものや尖った物など危険なものは遠ざけます。
また、頭を床や壁に打ち付ける等の癇癪の場合は、クッションを挟むなどして怪我を防ぎます。
落ち着くまで待つ
安全が確保されたら、子どもが落ち着くまで待ちましょう。
癇癪を起しているときに、必要以上に声をかけたり注意したりすると、より子どもを興奮させてしまうかもしれません。
もしもお店など外で癇癪を起したときは、一旦外に連れ出して、落ち着くのを待ちます。
冷静さを取り戻したら褒める
癇癪がおさまって、子どもが冷静さを取り戻したら、自分で落ち着けたことをしっかりと褒めるようにしましょう。
褒めることで子どもは安心でき、癇癪を落ち着ける方法を学ぶことで自信や予防にも繋がります。
■「子どもが癇癪を起した時のNG行動」
癇癪を起した際、間違った対応をすると、子どもの癇癪をエスカレートさせてしまうこともあります。
癇癪は子育てのせいではありませんが、子どもが癇癪を起こした時の対応方法には注意が必要です。
子どもの癇癪に感情的になってしまう
頭ごなしに叱ったり、暴力をふるったりすると、癇癪をエスカレートさせてしまいます。
もし癇癪中の子どもにイライラした場合は、大人もクールダウンしましょう。
物を与えて落ち着かせる
もしお菓子が欲しくて暴れる子どもにはお菓子を買い与えてしまったり、片付けを頼んだら物を投げるようになった子どもの代わりに片付けをしてしまったりすると、
「癇癪を起すと欲求が満たせる」と学んでしまします。
一時的に癇癪は収まるかもしれませんが、根本的な対処になっていないので、良い方法とは言えません。
■「子どもの発達に関する相談先は?」
子どもの癇癪が激しかったり、大人も疲弊してしまったりすると、家庭内だけでは対応が難しいこともあります。
また、癇癪の予防方法を考えるには専門性が必要な場合もあります。
もしも、子どもの癇癪に悩んでいたり、「発達障害かも」と思うようであれば、なるべく早く支援機関や専門家に相談することをおすすめします。
●子育て支援センター
主に乳幼児期の子どもとその親が交流を深める場です。
市町村ごとに公共施設や児童館の中にあり、癇癪など育児不安についての相談を受け付けています。
●児童発達支援センター・児童発達支援事業所
障害のある子どもが通所し、日常の基本動作・集団適応といったスキルの訓練を行う施設です。お住まいの市区町村へ問い合わせが必要です。
●発達支援障害者支援センター
癇癪の原因として発達障害の特性がありそうな場合は、発達障害支援センター等の支援機関に相談してもいいでしょう。
発達障害支援センターでは、発達障害のある子どもへの支援を行う専門機関です。
子どもへの関わり方についてのアドバイスや、必要に応じて福祉制度や医療機関の紹介なども行います。
●児童相談所
児童相談所は、18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じてくれる機関です。
都道府県や政令指定都市などに設置されています。
癇癪とは「大きな声をあげる」「手足をバタバタさせて暴れる」「物を投げつける」など感情の爆発を伴う行動です。
癇癪は子どもの成長過程でよくあることで、5歳過ぎると癇癪は落ち着く傾向があると言われています。
癇癪を頻繁に起こす、小学生になるまで長く続くからといって発達障害とは言えませんが、発達障害の特性が癇癪の要因に関係していることもあります。
癇癪の原因はさまざまですが、その原因に合わせて対処することが大事になります。