ADHD/ ASD/LDとは
ADHD/ ASD/LDとは
発達障害という言葉を最近は良く目にするようになりました。
ADHDは注意欠如・多動症、ASDは自閉スペクトラム症、LDは学習障害のことで、
発達障害とは主にこれらを指しての総称です。
最近では、身近に発達障害かもしれないと感じている方は非常に多く、
「発達障害かもしれない症候群」という言葉が出てきてしまうほど、
世の中には発達障害かもしれないと思っている方がたくさんいます。
発達障害というものも、名前から何かしらの能力の発達に障害があって劣っている子というように
理解されている方が多いのではないでしょうか。
私たちは発達障害を「病気」や「能力が劣る」と捉えるのではなく、「特性」「個性」と考えます。
例えば、ADHDは気が散りやすく、じっとしていられず、そそっかしい人。
ASDは空気を読むのが苦手で対人関係がうまくいかず、ある特定の物事に強いこだわりがある人です。
LDは「読む」「書く」「計算する」などが極端に苦手な人です。
しかし、このような人は大人子どもに関係なくどこにでもいて、
人それぞれ得意不得意があり、誰にでも少しは当てはまるものです。
発達障害の診断基準は「症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている」とあります。
なので、空気を読むのが苦手で、物事にこだわりが強かろうと、じっとしていられずそそっかしくても、
生活に支障がなければ障害域にあるとは言えません。
大事なのは、自分の特性を理解し、自分の置かれている環境を調節していき、
生きづらさを軽減していくことです。
①ADHD 【注意欠如・多動性】
ADHDとは
突然走り出したり、不注意でうっかりもの、忘れ物が多くて片付けが苦手、じっとしていられない、落ち着きがないといった特性があります。
成人してからは、「多動」の方は自制することができるようになり、目立たなくなることも多いので、
「ADD」などとH(hyperactivity)多動を省いてひょうげんすうrこともあります。
ADHDはその傾向にある子が非常に多く、小児期には人口の5~10%程ともいわれています。
《診断基準》
A 不注意
- 細かい注意ができず、うっかりとしたミスが多い。
- 注意力を持続させることが困難
- 注意散漫で、話をきちんと聞いているように見えない。
- 忘れ物が多い、指示に従えない。
- 整理整頓が苦手、散らかったものを隅に寄せて作業をしたりする。
- 何かに集中しているときでも、他のことに気を取られてしまう。
- 一つの物事をしている時に新たな物事を頼むと、前のことは忘れてしまう。
B 多動性、衝動性
- 着席中にそわそわしてじっとしていられない、離席してしまう。
- 状況にそぐわない行動をしてしまう、走りだしたりして落ち着きがない。
- 静かに余暇を過ごすことができない。
- 質問が終わる前に答えだしてしまう。
- 順番待ちが苦手。
- 思い付きの発言が多く、会話がすぐに飛んでしまう。
上記の多くに当てはまる人がADH傾向の人です。
上記のために生活に支障が出ている子は、障害域にある子がADHDになります。
診断基準自体が主観によるもので、捉え方によって変わってきてしまう上に、強弱があります。
ちょっとそうかもしれないという子もいれば、だれが見てもそうだという子もいます。
大事なのは診断を下すことではなく、その傾向を知ることです。
ADHの傾向があると、小学校の間はやんちゃで面白い子、目立つ子と理解されて人気者だったりしますが、高校、大学、社会人になり遅刻や忘れ物が目立ち、うっかりミスも多くなるため自己評価が低くなっていきます。
ただでさえ環境に適応しようと努力しているにも関わらず、周囲の評価が低くなってストレスをため込んでいきます。
そこに自己評価の低さが更に重なると抑うつ気分に陥り、仕事に行けなくなることもあります。
そうなると日常生活に支障が出ている段階になりますのでADHDと診断されます。
つまり周囲の環境のせいでADH傾向の子がADHDになってしまう事も少なくないということです。
②ASD(自閉スペクトラム症)
ASDとは
こだわりが強く、こだわりを対人関係よりも優先する。
空気が読めず、相手が気を悪くしているのにも気が付かずに、自分の話したいことを話し続けてしまう。
勉強はできるけど、人付き合いが苦手。という子が多いです。
推理小説の探偵役などの多くはこの特性を持っている人が多いです。
アスペルガー症候群という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、このアスペルガー症候群もASDに入ります。
(現在アスペルガー症候群という名称は使われなくなっています)
A 相互におけるコミュニケーションの障害
・喜びや楽しみ、悲しみ、達成感といった感情を人と分かち合うことに興味がない。
・一人でいることを好み、人と話をする時もまるで受け身か、一方的に話す傾向がある。
・独り言が多く、会話に抑揚がなく、敬語も使えず、皮肉や冗談が通じない。
・表情や、身振り、視線の変化など、非言語的コミュニケーションが理解できない。
・相手の感情に気が付かず、話し相手が急に怒り出しても、理由が理解できない。
・人の気持ちを動かすことに興味が持てない
B 限定された反復する様式の行動、興味、活動
・特定の物事に非常に強い興味を持ち、それ以外の物事に対して興味を持てない。
・特定の手順や、特定の物の配置、行動パターンなどに強くこだわり融通が利かない。
・特定の分野に非常に強い関心をもち、その分野における豊富な知識がある。
・特定の感覚刺激に対して敏感、もしくは鈍感で、特定の光や音や味、触感などを非常に嫌がる、あるいは人が嫌がる感覚を嫌がらないことがある。
上記のA、Bの多くに当てはまるとASの傾向の強いです。
上記の項目に当てはまり、それが日常生活に支障をきたしている場合にASDの診断となります。
小説や映画、ドラマの探偵役を思い浮かべてみてください。
例えばシャーロックホームズ……自分の趣味や興味が非常に限定されていて、非常に深くて豊富な知識をもっています。
誰が相手でも態度を変えずにずけずけと物を言い、相手が怒っても気付きもしません。
独り言が多く、友人は少なく、彼の特性を理解している人でないと、うまく付き合うことができません。
シャーロックホームズは極端な例ですが、上記のような特性を持った方も、ADH傾向の人ほど多くはないものの良く見かけると思います。
特に専門色の濃い分野の職場にはAS傾向の人が多く見られます。
そして、この特性には強弱があります。
いかにその傾向が強いかは、主観によるところがどうしても多くなります。
つまり、診る人によって診断が変わってしますことがあります。
また、項目Bのみの特性に当てはまる人はたくさんいます。
例えば、アニメオタク、映画オタク、車オタク、野球選手オタクなど、いわゆるオタクと言われる人たちです。
その人たちとASの傾向の強い人との違いは、項目Aに該当するかどうかです。
オタクの人同士で集まってトークで盛り上がることは、オタクの人ならみんなあります。
AS傾向の人は、自分の興味に他の人が興味を持っていようがいなかろうが、相手の話を遮ってまで話を続けたり、相手が呆れていたり、気を悪くしていたとしても気が付かないことが多いです。
③LD(学習障害)
LDとは
学習障害LDとは、全体的な知的発達に遅れはないのですが、
「読む」「書く」「計算する」のうちのどれか、もしくは複数が極端に苦手な状態です。
これは単純に苦手というだけの問題ではなく、見て、認識して、理解して、
行動するといった過程のどこかのプロセスが非常に困難であるという事です。
例えば「読む」事に学習障害があるとすると、ひらがなの集合が言葉になることが分からなかったり、
言葉を見て、何を意味するのか分からなかったり、どのように発音するのかが分からなかったり、
ひらがなそのものの意味が分からなかったりといった、様々なプロセスのどれかに困難があるという事です。
持って生まれた体質なので、苦手なものを無理に克服しようとするのではなく、特性を知って対策を練っていくことが大切になります。
ADHDの傾向やASDの傾向は強弱があります。
そして多くの場合この2つは重複します。
ADHDとASDの両方の傾向が強い子もいれば、ADHDの傾向が強く、ASDの傾向も少し持っている子もいますし、
逆にADHDの傾向が弱く、ASDの傾向が強い子もいます。
純粋にASDだけの子やADHDだけの子よりも重複していてどちらかが強く出ている子の方が多くいらっしゃいます。
そして発達障害を解決していくには特性を理解していく必要がありますので、
ADHD、ASDの枠にとらわれずに傾向の強い特性を個々に理解していく方が大事です。
例えば、それぞれの特性の強さを5段階で表すとします。
ある子の特性は
共感の障害が2・こだわりが5・感覚面の異常が4・不注意が4・段取りの悪さが3・衝動性が1のように表していくこともできます。
数字の大きさは特性の強弱を表すわけですが、本人がどう感じているか、周囲がどう感じているかによっても異なりますが、数字化するとそれぞれの特性の強弱が分かりやすくなります。
このように個々の特性を判断していき、ADHD傾向が強い、ASD傾向が強いというふうに理解していきます。
つまり診断にこだわる必要はないということです。
診断よりも特性を知って環境を調整していくことの方が重要です。
何の特性があって、その強弱がどれくらいなのかを理解して、環境の調整をしていきましょう。
学校や仕事を決めていく際に、自分のやりたいことで環境調整の実現性を考えていきます。
苦手な中でも出来る事、可能な場所を選んでいくことを考えて
基本的にはやりたいことを優先していきますが、
その特性が自分のやりたいことに対してどの程度障壁になるのかも考えて、バランスをとっていきましょう。
『周りに理解者を。』
自分の周りの人にもある程度はその特性を理解しておいてもらった方が過ごしやすいです。
ADHDやASDの傾向のある子は、苦手なことの裏に得意なことが隠されていることが多いものです。
例えば、融通が利かないこだわりの強い特性のある子は、他のことに目もくれずに一つのことに集中して
やり遂げることができるという特性と捉えられます。
こだわりが強い分、その分野の膨大な知識を持っている人も多いのです。
また空気が読めないという特性を持っている人は、人に何を言われても動じないという特性を持っているし、
言いにくいことでも言葉にできるという特性も持っているわけです。
このような子は気の合うもの同士であれば、うまく付き合っていけるのではないでしょうか。
不注意の特性を持っている子は、失敗にめげない特性を持っていることが良くあります。
それは多動、衝動性の特性を持っている人は、行動力があって、思い立ったらすぐに行動にだせるという特性でもあります。
このように特性のネガティブなところばかりに注目せず、ポジティブなところを生かせるような環境に身を置くことが大事です。
つまり困ったら人に相談できる環境を創ることも大事です。
ADHDやASDの特性を持つ子にとって最も良くないのが、その特性を本人も周囲の人も理解できず、
無理を重ねてしまって失敗を重ねるうちに人と衝突するようになり、本人の自己評価が下がってしまったり、人間関係がひどく傷ついたりすることです。
相談するのは信頼できる人でなければなりません。
ADHDやASDの傾向のある子はうつ病や適応障害を発症することが、その他の人よりも高いことが分かっています。
生きづらさを抱えながら懸命に生きているから、背負うものがどうしても多くなってしまうのです。
少数派のため理解してくれる人も少ないのですが
お子さまの特性をしっかり理解し、やりたいことを考えて、向き合って環境調整をしていきましょう。
お子さまのお困りごとやご相談等お気軽にご相談ください。